アニメーション界のサグラダ・ファミリア、ノルシュテインの「外套」。
制作が始まってからもう30年を越えましたが、未だ製作中の未完の傑作。未完だけど傑作。三部作の第一部がまもなく完成と言われたのが2006年頃、今はどうなってるのかと思ってたら未だに上映されるのはその当時の部分だけのようです。ゴーゴリの原作にして2ページ分の箇所。
ノルシュテインが頻繁に日本に来日するのは金のある日本で制作費を稼ぐため、と言われてましたが(「外套」は自費で制作している)もう十分稼いだだろうに。モチベーションが下がったか?
僕が観たのは10年ほど前、初公開された完成部分20分の特別上映でした。音声もなし。映像だけ。この作品は切り絵アニメですが冒頭から主人公の動き一つ一つに釘付けになります。驚異的なリアリティ、独特のテクニックから生まれる空気感、もう一体どうやって作ってるのか、なぜこんなシンプルな切り絵でこんなことが出来るのか?人が動くというただそれだけで感動する作品。
上映部分は主人公のアカーキーが地面に書き綴るタイトルから始まり、雪の中をとぼとぼと歩いて家に帰り、食事をしたり机に向かって仕事を片付けたりしてベットに入るまで。話は全く始まってません。展開も何もありません。でもこれは、完成を待つまでもなくたったこれだけで既に傑作。鳥肌が立つほどの20分でした。
ノルシュテインを劇場で観たのはこれが初めてだったのですが、この人の作品ほど映画館で観ないといけない作品はない。この微妙な質感、空気感はテレビやモニタで見るとまずつぶれてしまう。
という事で今はネットでも見れますがリンクはなしです。
今でもちょくちょく上映会があるようなので見てない方はぜひ映画館へ 。
「画が動く」という映画本来の感動を味わえます。