1月 03, 2016

久々にSFらしいSF映画 『Ex_Machina』(エクスマキナ)







映画でSFというとほとんどは名ばかりのアクション物やホラー物ばかりで、このジャンルは小説を読むしかないのかといつも思っていますが、たまーにSFとして力の入った映画が出てきます。

この映画はAI(人工知能)を題材にしたイギリスのインディペンデント映画。

最近は山のように作られているAI物の映画ですが、殆どはネタとして(アクション物や恋愛ものの色付けのために)AIを扱っている中で、この映画はかなり本質的な問題をうまく引き出している秀作。

問題とは本当に知能と呼べるレベルのAIができたら一体何が起こるのか。

あと30年余りで技術的特異点が来るという話があります。人工知能が全人類の知能を凌駕してしまう瞬間のことですね、これがあと30年ほどで来ると。人類の発明はその直前に作った人工知能が最後の発明になりその先は何をやっても人工知能に勝てなくなります。人工知能の思考に人間がついていけなくなるわけで、この時点で未来は人間にとって予測不可能になります。

エクスマキナはこの辺の問題を巧妙に暗示し、静かな絶望感として見せてくれる作品。その時が来たら人間はAIの思考など全く読めない、あらゆるデータを内包するそれは人が気づかないうちにゆっくりと人や社会に浸透し、自分が操られていても支配されていてもそれに気づくことすらままならない。まさに釈迦の手のひらの悟空状態、さらにその手のひらがないと人間はもはや生きていけないという皮肉。

監督はイギリスの小説家でダニーボイルと脚本、製作で組んでいたアレックス・ガーランド。

主要人物は3人しか出てこない、ほとんどが室内シーンで基本的にはローバジェットのインディーズ映画ながら緊張感のある会話で映画を引っ張っています。

最初と最後に出てくる外のシーンがいまいち投げやりで残念ですが、逆にAIロボットを含めたCG造形にはかなり力が入ってる。そしてシナリオが秀逸。

この映画は去年の1月に公開の作品ですが日本では未公開。海外では年間ベスト10に入るほどの評価にもかかわらず未だ公開する予定なし、ビデオすら出る気配なし。

しょうがないのでスペインアマゾンで日本語字幕入りのリージョンフリーBDを注文しました。久しぶりに海外輸入してみましたが送料込みで3544円、おそらく円安で1.5倍くらい高くなってますが到着まで20日ほど待てるなら問題なく購入できます。アメリカ、欧州のアマゾンは統一アカウントなのでひとつあればどこでも買い物ができます。

ちなみに日本でも輸入物が売ってますが、法外な値段を付けていたり字幕なしだったりリージョン違いだったりをこそっと売ってるのでご注意。
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